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心の旅

心のふるさとを見つける旅。断捨離、ミニマリスト、節約、ダイエットなどについても語ります。

植草圭之助の小説「冬の花―悠子」を再読中。この本は断捨離できません。

「本の断捨離」を敢行するにあたって、良い本とそうでない本とを仕分けているのですが、良書の多くは今は絶版となっていて、その度に落ち込んでしまいます。

出版社は「売れれば何でもいいから売ろう」という考えに徹していることは間違いありません。

売れそうもないはこの世からとことん抹殺し、とにかく売れそうな本だけ乱造しているのが今の出版界だといったら言い過ぎでしょうか。

それと今の出版界には「良い本と悪い本を仕分ける能力もない」ので、読者の側が本を正当に評価する能力を養うしかありません。

仕方がないので、良い本は良い本だ繰り返し訴えることで「良書を語り継ぐ」、そして「良書を一人でも多くの人に読んでいただく」ことにつとめようと心に決めました。

そんなことを思いつつ本棚を整理していた時に、オヤッという本が眼にとまりました。

植草圭之助の小説「冬の花―悠子」です。

 この小説を知っている人は少ないでしょうね。何しろ、絶版になっていますからね。

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これは傑作中の傑作とか、名著とか、そういう作品ではないでしょう。文学的な評価という点では、いろいろ問題があるのは私でもわかります。

ただ、しょうもない小説があふれている中で、まったく忘れ去られようとしている現状が信じられません。

結論から申しますと、これは貴重価値のある作品です。

若尾文子石坂浩二の共演でテレビドラマ化されたこともあります。放送されたのは1974年ですから、ずいぶん前のドラマですよね。

直木賞候補になり、選考委員の水上勉が「内容のもつ美しいうねりが、最後まで私をひっぱった。土台、いまの世の中に、こんな必死で、かなしい恋物語など書く作家はいまい……(中略)……おろかとも、善良すぎるともいえる男主人公のひたむきなものが、つよく私の心にひびいた」と選評しました。

驚くべきは、この小説は植草圭之助の実体験をもとに書かれていることです。

愚直であり、壮絶でもある、作者の体験が、生々しい筆致で記されており、文学と呼ぶには余りにも純朴な表現があふれています。

完成度の高い小説ではありませんが、読む者の心を揺さぶる力、その純粋さにおいて極めて貴重だと私は信じて疑いません。

世の中に間違って評価されている小説が山ほどある中で「冬の花―悠子」が無視されていいはずがない。特に男性には一読の価値あり、と強く主張したいのです。